えんがわさぼう
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(こうざん)(のぼる) (ざ)       (てんの)       (しらず)
高山に登ら不れば、天之高さを知らず(空が高いのは山に登るとよく分かる。先ずは一歩ずつ登ってみよう)春からの新社会人へ送る言葉

 茶は椿の仲間なので葉は艶があって美しい。艶(ツや)の有
る葉(ハ)の樹(キ)で、略して、ツ・ハ・キ ⇒ ツバキ 
と呼ぶ。因みにチャの近縁種のサザンカは“山茶花”と書く。
音読みで サンチャカ ⇒ サンザカ ⇒ サザンカ(連濁の
法則)また、葉の縁がギザギザ(鋸歯:ギョシ)であれば茶の
葉と思って差し支えない。表面を保護している艶の成分は、
ラテン語で“クチクラ(Cuticula)”と呼ぶ皮膜。英語で発音
すればキューティクルとなる。チャは甘いので虫から食べられ
ないように、これで保護する訳だ。そんな茶樹を平地で育てれ
ば恰好な餌になる。よってチャは自己防衛の為、葉の内部に
“苦味”や“渋み”を生成し食べられないようにする。それで
もホウレン草やチンゲン菜より遥かに甘い。当然、生産者は農
薬を振り撒く。
 新茶の時期に茶畑の整然と並んだ畝が綺麗だと思う人が大半
だが、それが不自然と感じる人は、今は僅(わず)か。
 以前、美味しい茶の樹は岩に生えるものが“上”と記した。
そして高貴な香りは高い山に育つものから発する。
 茶は甘いから飲むと述べた。目にする平地の茶畑の葉は、虫
や鳥が食べない事実。
 オランダやイギリスが茶を知ってから、日本も江戸末期の安政6年(1859)
には、横浜港から輸出を開始している。
 維新後、富国強兵の名の下に軍需品等を輸入するのだが、代わりの輸出品
は生糸と茶で8割だった。ここに於いて茶が輸出品目の花形になっていく。
 自然の山で育った人間の手を加えてない状態の『在来(ざいらい)』と呼ぶ
が、それらから大量生産に向く『品種(ひんしゅ)』化が進められる。明治
の終わり頃、駿河の篤農家である杉山彦三郎氏の自家の竹薮(やぶ)の北で
育成された”やぶ北“は、当然収穫量が高く、冷害に強く、種子で発芽率の
低いチャという植物のなかで、最も挿木に向いた優良品種として採用される
。それは全国に拡がり、現在では杉山家の一本の樹のクローンが、100年
余で全国の茶畑の8割強の普及率を誇るようになってしまった。茶葉の販売
店には沢山の銘柄並んでいる。味も違うと感じているが、実は同じものだ。